地域社会に開かれた施設つくりと地域貢献に向けて

 

 私たちは障がいを持つ人たちが住み慣れた地域で誰とでも気持ち良く挨拶をかわし、持てる能力を高めながら働き、日々楽しく意欲的に過ごせるような施設作りをめざしてきましたが、少し経緯を振り返ってみましょう。
「ふきのとう」は東浅川の三田町会の工場跡倉庫で平成2年に産声をあげました。
私は、もともと同じ三田町会に住んでいたこともあり、近隣住民に知り合いも多く、利用者の工賃を稼ぐために「ふきのとう」でバザーを始めた時も、その方々が贈答品や不用品などを提供していただき、その輪が次第に大きくなり、とても盛況で年に何回も行うようになりました。又、古紙や空き缶もいただきに行ったり直接施設に持参する方も増えました。このようにごく自然な形で交流が生まれ、地域住民に親しまれる開かれた施設になりました。

 

 「ふきのとう」が一杯になったため同じ東浅川の原町会に友人の家を借り、スロープなど少し改造して、平成10年に「第2ふきのとう」を作りました。「ふきのとう」の経験を活かしたため近隣住民の皆さんと直ぐに親しくなりました。外歩きの好きな利用者さんは毎日路地のゴミ拾いをしながら話して廻り、近所の方は施設の昼食作りを手伝っていただき、苦情など聞くことのない素晴らしい関係がごく自然に出来ました。

 

 社会福祉法人の認可(H13年)をいただいてから、日常活動の基盤となるバリアフリーで車いすトイレなど最低条件を備えた自前の施設建設に力を入れることにしました。
子どもたちの健全育成のためにと同じ組で作った笹野会で親しくさせていただいていた笹野さんにお願いしたところ障がい者の施設を作るならと土地を譲ってもらいました。
又、「ふきのとう」は、10年に及ぶバザーや盆踊り、十二社祭礼など住民との日常的な交流があったため建設にも全面的な同意と協力をいただき完成しました(H15年)

 

 2つ目の「ころぽっくる」は、「家族のため必要なとき、いつでも使えるショートステイを」という笹野さんの強い要望を受け敷地も無償で提供いただき、制度的に運営費は厳しいことはわかっていましたが、障害者をもつ多くの家族が困っているならと開設を決断しました。
建設についても同じ蕗の会が創るならと何の苦情もなく完成しました。(H18年)
運営は10年間赤字でしたが、法人内は勿論、利用する皆さんの協力で持ちこたえ、最近放課後等デイ事業も開始してやっと軌道にのりつつあります。

 

 しかし、3つ目は、順調ではありませんでした。近隣住民に親しまれ、10年間とけこんで活動していた「第2ふきのとう」は、住宅地を買う資金はなく、同じ町内に用地を見つけることは出来ず、何年も掛けてやっと探したのが元八王子町のはずれでした。近隣住民や町会に施設建設のお願いに廻りましたが同意はおろか、話も聞いてもらえませんでした。東浅川町にあった、長い間そこに住み、知り合いも多く、10年間積上げた施設や利用者を含めた信頼関係が、新しい元八王子には全く無いよそ者だったからなのです。
しかし、やっと入手した広い用地をあきらめることは出来ず、時間がかかることを覚悟して昼も夜もしつこく町会や近隣を訪問し、利用者の切実な訴えの署名を持って説明会も繰り返しました。
私達があきらめずしつこいので町会役員の一人が「話を聞いてみよう」ということになりました。私は強調しました。
“私たちは障がいを持つ人達の働く場を作りますが、町会や住民のために出来ること何でもやります。きっと「この地に施設建設を認めて良かった」ということになると思います”と。協議は再開され、近隣住民も町会も私たちの想いを認めてもらい、やっと造成工事にこぎつけ、「ひのき工房」として施設も完成しました。(H21年)

 

 「ひのき工房」を開設して8年、近隣住民も含め、町会・学校・他の施設等とも良好な信頼関係を築くことが出来ました。それは、私達が町の子供育成会の集団回収に協力し、各家庭の玄関先に出された古新聞や空き缶を利用者さんと回収するたびに顔を合わせ「ご苦労さま」「ありがとうございます」の挨拶を気持ちよく行ってきたことが住民に認めてもらう大きな契機になったと思います。城山小の6年生は、毎年ひのき工房で木工品を見て自分の作りたい物をきめ、学校に帰ってひのき工房の利用者・スタッフがセットした糸鋸で、切り、磨いて自分の作品を完成させます。城山中の生徒さんも毎年夏休み体験実習に来てくれます。
住民全体に呼びかけて毎年行うひのき工房祭りは、生徒さん達のダンス、演奏会、ヨーヨーなど発表の場でもあり、バザーや食事は住民交流の場でもあります。

 

 そして今、社会福祉法人蕗の会の地域貢献事業として「子ども食堂」を開設すべく準備を進めています。
夜ひとりで過ごす時間が多い母子・父子家庭の子どもたちや独り住いの高齢者や障がい者が誰でも気軽に立寄れる場が出来ればと願っています。

これは、更に町会、小・中学校、福祉施設や地域住民で運営する施設にしようと何回も話し合いを重ねています。これが成功すれば『地域運営の子ども食堂』のモデルケースとなると思います。

 

 私達は障がい者が健常者と同じように働く雇用の場も作ってきました。1つは八王子市の不燃物処理センターの選別作業をいただき(H27~「戸吹不燃」)全員が最賃以上で働き、自立した生活を送っている方もいます。
更に、(株)エフピコの食品容器製造工場の委託を受け、20名の方(A型10名、B型10名)が、コンビニ等に納入する品質の良い容器を毎日量産(1日30,000個以上)しています。(「ぽぷら八王子」
2つとも工場は、戸吹町にあり、クリーンセンター祭等で交流が始まったばかりですが、今後は町内清掃やお祭りなどに参加したり、見学を受け入れ交流させてもらいたいと考えています。

 

 毎日のように出掛ける回収や清掃の作業があります。子供育成会のサタデースクールのために地域の方が竹トンボ作りのため施設に見えます。スタッフや利用者も小中学校に出掛ける機会があります。ひのき工房祭りや盆踊りには、沢山の方々が集い楽しみ、挨拶をかわします。こうして初めて障がいを持つ人達が住み慣れた地域でひとりの人間として当たり前に生活していけるのだと思います。こうした交流の機会を出来るだけ増やし日常的に接するのが当たり前にしていくのが施設のスタッフの役割だと思います。

 

 蕗の会の各施設は、関係者以外立ち入り不自由=閉ざされた施設ではなく、何やかや用事があって地域の方が自由に出入りされる開かれた施設にすると共に、地域の皆さんが(例えば)“ひのき工房があってよかった”と思われる施設になったとき、はじめて地域にとって“よそ者”ではなくなると思います。そして、“いざ震災”という時も利用者さんを助けてもらったり、私たちが避難所に行けない高齢者を一時お預かりや食事提供など当たり前に出来る顔の見える関係が少しずつ出来ていると思います。蕗の会のどの施設も地域住民の皆さんに「あって良かった」と評価されるよう努力したいと思いますのでどうかよろしくお願い致します。

 

 

   平成29年9月

                                             社会福祉法人 蕗の会  理事長  岩澤 六夫